学会の変革
1980年代半ばより、ブドウ球菌および緑膿菌の病院感染が報告されていた。その後、多剤耐性菌が話題となり、海外ではacquired immunodeficiency syndrome(AIDS)が問題となっていた時期である。病院感染への対応にはチーム医療が欠かせないという立場から、川名林治先生が主催されていた東八幡平シンポジウムが契機となり、本学会の設立の機運が高まった。
1985年4月2日、学会の設立準備委員会が発足した。発起人は上田 泰先生(東京慈恵会医科大学)、清水喜八郎先生(東京女子医科大学)、川名林治先生(岩手医科大学)、熊本悦明先生(札幌医科大学)であり、総務として小林寛伊先生(東京大学)と松本文夫先生(神奈川県衛生看護専門学校)が加わった。
環境由来の感染の一つに病院感染が位置づけられてきた。本学会では、病院感染制御を中心的研究課題としていくが、環境の変化によって発生する感染症、感染症の疫学調査と原因の究明、感染予防対策、病院建築設備と感染、腸管感染症などにも課題を広げていくことが確認された。近年、病院感染制御の領域においては、薬剤耐性菌の多発、院内での空気感染、医療技術の向上に伴う複雑な感染、易感染患者に対する日和見感染症などが特に課題となってきた。本学会の果たす役割は多岐にわたるが、医療関連感染の制御に関わる多くの関係者が活躍している。
歴代の理事長
1986年~1991年 | 上田 泰(東京慈恵会医科大学) |
1992年~1995年 | 清水喜八郎(東京女子医科大学) |
1996年~1997年 | 松本 文夫(神奈川県衛生看護専門学校) |
1998年~2001年 | 小林 寛伊(NTT東日本関東病院) |
2002年~2005年 | 木村 哲(東京大学) |
2006年~2009年 | 大久保 憲(東京医療保健大学) |
2010年~2014年 | 小西 敏郎(NTT東日本関東病院) |
2015年~2018年 | 賀来 満夫(東北大学大学院) |
2019年~2023年7月 | 吉田 正樹(東京慈恵会医科大学) |
2023年7月~ | 四柳 宏(東京大学医科学研究所 先端医療研究センター) |
学会の主な事業
1986年 | 学会誌「環境感染」Vol.1, No.1 を発行 |
1990年 | 本邦初のガイドライン「病院感染防止指針」発行 |
1995年 | 10周年記念事業:看護婦(士)海外研修派遣事業 2年間計12名派遣 |
2001年 | 病院感染防止マニュアル発行 |
2001年 | 教育施設認定病院に16施設を認定、以後漸次認定追加 |
2004年 | 学会関連用語英和対照表発行 |
2005年 | 20周年記念誌発行、第1回 ICP講習会開催 |
2006年 | 教育用プレゼンテーション資料「教育ツール」公開 |
2006年 | ICP講習会の代わりに学会教育委員会講習会を開催、以後継続 |
2008年 | 学会誌の名称を変更した:「日本環境感染学会誌」 微量採血用穿刺器具の取扱いに関する見解発表 教育委員会講習会におけるDVD制作が開始され、以後継続 |
2008年 | 消化器内視鏡の洗浄消毒マルチソサエティガイドライン発行 |
2009年 | 院内感染対策としてのワクチンガイドライン発行 |
2009年 | 医療施設における新型インフルエンザA(H1N1)感染対策の手引き発表 |
2009年 | 疫学トレーニングコースの開催、以降継続 |
2009年 | 診療報酬点数改正に伴う感染防止対策加算新設のための資料と意見書の提出 |
2009年 | 認定教育施設に対する院内感染地域支援ネットワーク構想開始 |
2010年 | 用語集の冊子発行 |
2010年 | 多剤耐性アシネトバクター感染症に関する提言(感染関連四学会) |
2010年 | 多剤耐性菌感染制御委員会発足 |
2011年 | 避難所における感染対策マニュアル公開 多剤耐性グラム陰性菌感染制御のためのポジションペーパー公開 生体消毒薬の有効性評価指針:手指衛生 2011公開 |
2012年 | 消化器内視鏡の感染制御に関するマルチソサエティガイドライン改訂版発行 |
2014年 | 大規模自然災害の被災地における感染制御マネージメントの手引き公開 生体消毒薬の有効性評価指針:手術野消毒2013公開 感染制御インストラクターコースの開催、以降継続 医療関係者のためのワクチンガイドライン 第2版公開 用語集 第2版公開 |
2015年 | 倫理委員会発足 利益相反委員会発足 エボラ出血熱関連情報資料集Vol#1公開 |
2016年 | 新規抗菌薬の開発に向けた8学会提言公開 抗菌薬の適正使用に向けた8学会提言公開 用語集・用語解説集 第3版公開 |
2017年 | 医療関係者のためのワクチンガイドライン第2版の追補版公開 医療関係者のためのワクチンガイドラインMMRVのQ&A集公開 多剤耐性グラム陰性菌感染制御のためのポジションペーパー 第2版公開 抗菌薬適正使用支援プログラム実践のためのガイダンス公開 広報委員会発足(2018年にリスクコミュニケーションへ改名) 職業感染制御委員会発足 ワクチン委員会発足 ホームページ・SNS等運営委員会発足 学会誌「日本環境感染学会誌」オンラインジャーナルでの公開開始 |
2018年 | 医療環境委員会発足 用語集・用語解説集 第4版公開 リスクコミュニケーション委員会企画セミナーの開催 医療環境委員会主催セミナーの開催 地域セミナーの開催 臨床研究推進委員会発足 NICU感染対策検討委員会発足 Clostridioides difficile感染対策ガイドライン策定委員会発足 ISO/TC304国内審議委員会発足 |
2019年 | 学会ホームページのリニューアル 総務委員会発足 財務委員会発足 地域セミナー委員会発足 DICT活動要項公開 DICT研修会開催 |
2020年 | 新型コロナウイルス感染症への対応ガイド第1版から第3版公開 医療関係者のためのワクチンガイドライン第3版公開 厚生労働省委託の院内感染対策講習会開始 地域セミナーオンライン講習会開催 環境消毒薬の評価指針2020公開 多剤耐性グラム陽性菌感染制御のためのポジションペーパー 第1版公開 |
2021年 | COVID-19 対策委員会発足 新型コロナウイルス感染症への対応ガイド第4版公開 大規模自然災害の被災地における感染制御支援マニュアル2021公開 |
2022年 | 医療機関におけるC 型肝炎ウイルス曝露後検査の進め方公開 Clostridioides difficile 感染対策ガイド公開 医療関係者のためのワクチンガイドライン第3版 追補版 新型コロナワクチン公開 WHO手指衛生セミナー開催 |
2023年 | 学会公式英文誌としてJournal of Infection and Chemotherapyに加入 医療機関における新型コロナウイルス感染症への対応ガイド(第5版)公開 新型コロナウイルス感染症の5類移行後の医療機関の対応について公開 生体消毒薬の有効性評価指針:手指衛生 2023公開 |